フォーラム事務局

香川大学瀬戸内圏研究センター

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お知らせ&イベント

「ヘルスケア・イノベーション・フォーラム」
第2回事例研究部会議事要旨
日時
平成22年2月4日(木)15:30〜17:45
場所
e-とぴあ・かがわ(情報通信交流館)BBスクエア
議事概要

(1)新規参加団体の紹介

新規参加団体(医療法人財団パルモア病院、四国情報管理センター(株)、(株)パシフィックシステム、日本遠隔医療学会)の代表者より、事業内容等を紹介。
(新規参加団体のうち、(株)ブイキューブ、(独)産業技術総合研究所社会知能技術ラボは今回欠席)
その後、東京医科歯科大学 田中博教授から、フォーラムへの期待などを発言。


(2)第1部 事例研究

事例1:「eヘルスケアバンク」推進プロジェクトの概要
(株)STNet 横田貴文氏より、経済産業省「PHR委託事業」について説明。
○「かがわeヘルスケアコンソーシアム」の目的

  • PHRのデータベースの中に医療・健康の情報を蓄え、県民の健康管理意識の向上をめざす
  • 地域健康データ管理システムにより各個人で健康を管理していく
    (IruCaの有効活用)
  • 見やすく、なじみやすいポータルサイトを作り、シングルサインオンにより、各種情報を容易に共有できる仕組みを提供する

○具体的な実証事業の内容

  • IruCaをサイトログインする際の認証カードとして使用
  • 保健師等が個人の情報を見て、アドバイスするサービス
  • K-MIXのシステムからPHRのデータベースに連携
  • 実際に機能を使用している例の紹介

事例2:「健康で地域をつなごうプロジェクト」の取組について
(株)コナミスポーツ&ライフ 森谷路子氏より、経済産業省「地域総合健康サービス産業創出事業」を中心に報告。
○スポーツクラブ会員の健康情報を確認できるシステム等の紹介
○地域健康サービス産業創出事業の報告
−ウォーキングモニター事業(5,000名位)−

  • 高松市民に歩数計を渡し、歩数登録を行ってもらう

−「メタボ!克服モニター」事業(60名)−

  • 医療機関とスポーツクラブとのシステムを連携させ、指導が必要な方をサポートしていく
  • 4つのコースに分け、取り組みの成果を実証する

事例3:「日立市健康増進サービス事業コンソーシアム」の紹介
日立市健康増進サービスコンソーシアム((株)日立製作所)岩田 淳也氏より、日立市健康増進サービス事業の事例報告。
○実証事業の内容

  • 公的サービスと民間サービスを連携していく

−目的−
@実証するサービスモデルの有効性検証
A地域で継続させていくためのビジネスモデルの検証
@Aを中心に資料の6個の検討内容を取り組んでいる
−概要−

  • 日立市をフィールドとし、主にメタボリックシンドローム対象者を中心としたメタボ改善をテーマとした取り組み
  • はらすまダイエットシステム(90日間で体重の5%減量を目標に取り組むプログラム)の紹介

○実証事業の結果

  • はらすまダイエットシステムを最後まで継続できた人 91% 
    減量成功率 54% 等
  • どうすればこの事業モデルが上手く回っていくか検討していく

(3)第2部 パネルディスカッション

【テーマ】日本版EHR/PHRの構築に向けた課題と展望
モデレーター:独立行政法人産業技術総合研究四国センター 国文友邦センター長
パネリスト:
(産業界)(株)STNet 横田貴文氏
(株)コナミスポーツ&ライフ 森谷路子氏
日立市健康増進サービス事業コンソーシアム 岩田 淳也氏
(大学) 東京医科歯科 田中 博教授、香川大学 原 量宏教授
(行政) 四国経済産業局 堀口 光氏

○田中教授より日本版EHRについての説明
○原教授よりK-MIXの現在の状況の説明
○堀口氏より新成長戦略の説明

  • 医療・介護・健康関連産業の成長産業化
  • 日本初の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発推進
  • アジア等海外市場への展開促進
  • バリアフリー住宅の供給促進
  • 医療・介護サービスの基盤強化

日本の新たな社会システムを、アジア、世界へと発信していく


○第1部の事例研究についての質疑応答(以下、敬称略)
Q.医療機関側から見た、EHR/PHR実現へのビジネスモデル的な考え方はあるのか?
A.

  • ビジネスモデルとして確立したものではないが、医療機関が患者サービスを向上する観点からPHR費用の一部を負担し、その医療機関の患者はPHRを利用できるという仕組みが考えられる(住民のみでPHR費用全てを賄うことは難しいと思う)。
  • 今回の実証事業の中でいくつかのクリニックに協力いただいたが、手間がかかるという意見よりも、患者さんがどのようなライフスタイルを送っているかの把握に役立ったとの意見があった。
  • かかりつけ医というような、自分のことを知ってもらえるという付加価値との組み合わせでビジネスモデルが考えられるのではないか。

Q. 医学(医者)の立場から見た時、企業側のビジネスモデルと関わり合うことに問題はないのか?
A.

  • アメリカ発PHRの考えをそのまま日本に適用すると、民間企業と業務提携ができない(病院側がデータを教えてくれない)といった問題が発生する。病院のデータを共有していくためには、日本のレギュレーションを変えていくことが必要である。ただ、健康管理に関しては、(検診情報を持っている)健康組合等が関係することにより、情報を収集できると思う。最近では、医療データの管理を民間企業に委託する例も増えており、今後の企業ベースで発展していく可能は高い。
  • お産は、医療の中でもビジネス的な要素が大きい。例えば、母子手帳は民間病院ではかなり有効なツールであり、EHRを妊婦さんに使用してもらうのが戦略的にいいのではないか。香川のEHRは、毎日自分の健康に関心のある所でやらないと持続しないということで、JR四国及びJR四国バスにお願いした。
  • ドクターと経営側との意識が違うことが問題。医学部を卒業すると、医師として良ければいいと思うところがあるが、社会全体で有効活用するため、電子カルテを未来永久に使えるデータにすることを理解しない医師が多い。今後は、医局で若いころに指導していくことが必要であろう。

Q. 四国はIT医療の最先端かもしれないが、離島はブロードバンドがない。離島の高齢化の進んだ地域に対しては、どのような対応策が考えられるか?
A.モバイルの使える所では、TV会議システムは使える。また、理論的には、衛星回線でログインできるので、これらの通信環境が活用できるのではないか。

Q.携帯電話が使えないので、モバイルも使えず、民間通信事業者に言っても無理なので衛星を検討しているが、オペレーションコストもかかる。経済産業省など政府が資金を出して欲しい。県の方にも動きかけている。
A.離島振興法で離島は別の位置づけにされており、行政の支援は優先的に受けられると思う。しかし、経産省は回線を引くことはできないので、総務省など他の機関と上手く連携していけばいいのでは。また、現存の環境でできることを、有効利用していくことも重要だと思う。

Q.岩手県遠野市で産まれる前からのデータや高齢者のデータを入力している。検査情報は市の健康データベースに入っており、そのデータをWeb親子電子手帳等にもらえるように連携している。行政から健康情報をもらえると、今まで見られなかったものを見ることができるので、行政との連携が重要だが、どうやって進めていけばよいのか(例えば、学校の検診データはもらえない)。今後どのように連携していけるかが、日本版EHRにつながっていくと思う。
A.長崎県大村市では、学校の健康診断のデータを社会保障カードで見ることができる取り組みを実施しようとしているので、参考にして欲しい。ご指摘のように、学校のデータが最初からないと継続性がない。行政も連携して、引越しした時に前のデータが必ず見られるという状況を作るのがPHRだと思う。

Q. EHR/PHRの具体化にあたってビジネスを考えた時に、ユーザーに費用を継続をして払ってもらう方法はあるのか?
A.

  • 民間ができることはやっていくが、それだけでは健康サービス事業ははじけない。EHR/PHRを考えるときは、色々な財政的ポケットがあったらいいと思う。
  • 継続性とお金をもらうことの両立が大切であり、その基盤としてPHRを活用する。

Q.モニターに参加しているのは健康に対してプラス思考の方だと思うが、今後の発展に向け、これらの対象者を伸ばしていくべきか、意識が低いも含めた全体のためのシステムを考えていくべきか?
A.

  • 健康意識の高い方は、ITが無い時から熱心であるが、ITがあるからこそ情報があり、継続性が高まるので、EHRはそれを維持していくには良い。しかし、本来健康情報を最も必要としている人は忙しく、ほったらかしにしているので、自治体、地域連携の医療機関等による支援が必要である。そのためには、ビジネス的なPHRと同時にEHR的な要素は残さざるを得ないと思う。
  • スポーツクラブに自ら来る方は、自分の体を知っている方が多いので自分の健康情報にあまり興味がないが、そういう方のデータが蓄積されていくことは長期的にみると重要。一方、積極的でない方に、情報を集めるためのモニター等をすると楽しんでやってくれるが、それだけでは全部は拾えない。PHRを全面に出し、響かない層に対しても健康情報が気づかないうちに貯め、将来的に医師や保険設計に使ってもらうことに価値があると思う。
  • 政府でも、PHRをいかにビジネスとして回していくかが最大の問題であり、財政的負担を誰がするか議論している。一つのポケットだけではなく、複数の受益者が少しずつ負担することで実現できると考えている。ポケットとして考えられるのは、まずは本人。個人の健康維持・増進は本来、個人が負担すべき問題であるということが基本論だと思う。これにお金を払うという意識は乏しいが、フィットネス等にお金を払う方はいるので、全く考えられないわけではない。今後は、健康維持にお金を使うという意識を高めていくことが重要であろう。
    次は、保険者が被保険者の医療・介護に対する予防措置の観点から支払うことが考えられる。また、従業員や住民の健康状態が良くなれば、企業の生産性や自治体のイメージアップに繋がることも考えられる。ただ、財政が厳しいので、ここにかける予算が厳しいのが現状。
    さらには、新製品のテスト・PRをすることにより、それを提供する企業からお金をもらうことも考えられる。一種のグーグルモデルとしての考え方であり、収集したデータを色々なサービスで使うこと(二次利用)で課金を得るというシステムも考えられる。
    いずれにしろ、どれか一つだけでは成立することはできず、色々なモデルを組み合わせて初めて成立すると思う。この際、健康価値というものを個人に見えるようにすることが重要であり、ポピュレーションアプローチよりも、まずは意識の高い層にターゲットに絞り、成果を上げていくことがビジネスになりやすいと思う。まだ市場として確立していない中、まずは、関係者が連携することで「規模と範囲の経済」を獲得し、コスト削減と魅力ある多様なサービスを提供することが重要ではないか。その上で、複数のポケットを活用し、個々の負担が下がるような新しいビジネスモデルが作れればいいと思う。この意味からも、本フォーラムの意義は大きいと思う。

5.連絡事項

(1)次回部会     3月24日(水) 東京・副都心センター
(2)今年度第1回総会 5月27日(木) サンポートホール高松

(詳細は改めて事務局よりご連絡します。)

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