お知らせ&イベント
「ヘルスケア・イノベーション・フォーラム」
第35回事例研究部会議事要旨
1.開催日時・場所
【日時】令和元年11月15日(金)13:15〜16:40
【場所】高松サンポート合同庁舎 アイホール
【出席】40名
2.開会
3.議事概要
(1)事例研究
- 1.「令和2年度厚生労働省の概算要求
ICTを活用した産科医師不足地域に対する妊産婦モニタリング支援」
香川大学瀬戸内圏研究センター 特任教授 原 量宏氏より「令和2年度厚生労働省の概算要 求ICTを活用した産科医師不足地域に対する妊産婦モニタリング支援」の発表があった。
【質疑応答】
Q.今回のさぬき市民病院の場合、さぬき市民病院の方が現在妊婦さんの面倒を香川大学附属病院で診ていただくと。そういった立場の中で、情報をオープンにするわけだが、通常の場合だと医療機関が情報をオープンにしないというところもあり、今後情報を共有していくためにはどういったやり方があるのだろうか。(大家副座長)
A.まず、K-MIX+は全ての診療科が対象で、その中でどういう情報を公開するかということは、中核病院の病院長、或いは管理者を全部県庁に集めて色々とディスカッションをして、どこまで情報を見せるか決めていった。ドクターと看護師の記録は見せたくない病院が多かったが、香川大学と県立中央病院はそれにもかかわらず、記録を見せている。そういうことがあるので、特に妊婦管理のデータに関しても、個々のドクターによって見解が異なるが、さぬき市民病院の産婦人科医が2人とも辞められたので、香川大学の医局の先生が診察支援している状況。(原座長)
Q.逆にそういった状況だからこそ、今度はその状態を広げていこうとする時に、病院同士の間で、なかなか全て情報をオープンにするという状況は難しいような気がするが、そのあたり具体的に方策はあるのだろうか。前回は県庁で集まって「ここまでやりましょう」というやり取りがされたが、原先生が考える次の一手は。(大家副座長)
A.私が赴任した1980年当時、香川県の産婦人科医会に大変反対されたが、最後は皆さん考 えに賛同していただいた。先ほど発表の中でお見せしたが、個人病院でお産をやっている ところは息子さんや娘さんが跡を継いでくれないからぜひ入れてほしいと。そうしないと 妊婦外来もできなくなってしまう。妊婦さんが来なくなると産婦人科は急に寂しくなるの でこういったシステムに賛同されている。(原座長)
Q.尾形社長、営業を担当されて現場の声はどうだろうか。(原座長)
A.使っていただいて機能を分かってもらえると、いいねという風に変わっていく。それまで がちょっと大変。(メロディ尾形氏)
- 2.「JICAプロジェクト チェンマイ県全域の25病院にプチCTGを導入」
メロディ・インターナショナル株式会社 CEO 尾形 優子氏より「JICAプロジェクト チェンマイ県全域の25病院にプチCTGを導入」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.今回、プチCTGをLINEに紐付けたということは、タイにおいて医師や看護関係の方々で LINEが広がっているからということだろうか。(大家副座長)
A.医師、看護師に関わらず、タイではLINEが盛んに使われている。医師と看護師の間でも特にLINEはセキュリティがないじゃないかということはなく使われている。昔は画像を添付して送っていたということがあったが、今回あらためて導入病院が25病院になったので、LINEグループはアメーバのように組み替えることができ、自分たちが使いやすいように使ってくれている。(尾形氏)
Q.プチCTGを現地の病院に導入して、改良されてきたわけだが、改良された結果、ほぼ問題点は解消されているのだろうか。(大家副座長)
A.ほぼ解消されているかというと、まだ解消されていない部分がある。例えば、今までのプチCTGは、すぐにプリントができたので、これまでプリンターを運用面で使っていた病院ではプリンターが必要ということを言われるが、私共としては、今後はデジタルデータのサーバ保存ということで、サーバの場合、データが最長10年以上持つので、そういった点でおすすめしている。(尾形氏)
Q.プチCTGの電源というのは何を使っているのだろうか。(JICA四国 岩井氏)
A.機器の中にバッテリー電池が入っていて、充電して使うようになっている。途上国ではとても重宝されており、携帯と同じように1時間くらい充電していただくと満充電になって、ほぼ一日の業務に使うことができる。(尾形氏)
Q.日本全国、また世界で統一したシステムを展開したいと考えた場合に、電源やその他の部品等々含めて修理が日本以外でも可能なのかどうかお聞かせいただきたい。(JICA四国 岩井氏)
A.今ちょうど各国で修理できる所がないか探しており、電源自体は非常に標準的なミニUSBを使っているが、電池の交換がすぐにできるようなものに変えていく必要がある。そのような修理等ができる場所が各国に1か所くらいほしいと考えている。(尾形氏)
Q.故障した場合に、さっと別の機器を持ってきてすぐに代替がきくという考えでよろしいのだろうか。(大家副座長)
A.今のところそのような形をとっており、JICAの事業でも2台くらい予備機を置いているので、すぐに交換して使うことができる。今のところ、導入してからまだ壊れておらず、そんなに度々壊れるというものでもないというところもある。(尾形氏)
Q.その際に、機器には個別IDが記録されるのだろうか。(大家副座長)
A.はい。タブレットの表示機のアプリと、サーバで「この機器をこの病院のものとします」と個別に設定しているので、そのあたりはリモートでもできるようになっている。(尾形氏)
- 3.「Bridging Kenya and Japan Through ABE Initiative〜Case of Melody i〜」
Melody International Ltd. ABE Initiative intern Hellen Mwangi氏より「Bridging Kenya and Japan Through ABE Initiative〜Case of Melody i〜」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.お産の費用を無料にするプロジェクトを進めようとしていることだが、今、お産するにあたり、費用が問題になっているのだろうか。(上野氏)
A.The free maternity service was launched free since 2013. Pregnant women can visit don't pay any cent in a Public Hospital.
Q.How about before 2013?
A.Before, pregnant women had to pay at hospitals for delivery and antenatal care. Some people have not enough money to pay, so they just stay home, don't visit until time to deliver, maybe they have saved money for delivery. (Ms. Hellen)
Q.Thank you for the presentation. I'm Yuka Takanishi from PHC Corporation. I have two questions. You mentioned that most of Northern part of pregnant women, they don't care from healthcare professionals. Do you mean does it include doctor or midwife? That's my first question. Second one is what is the biggest problem for pregnant women now? Is it about location or money? (Ms. Takanishi, PHC Corp.)
A.Thank you so much for your questions. I'll answer your questions based on one,If you look at the regions in Kenya, some of the regions are marginalized and pregnant women don't attend antenatal care, if you look at North Part of Kenya, most of them are due to social-cultural issues, for example, some believe that giving birth is just something natural to happen, so they don't need to visit hospital or something like that. Also, Poverty. They don't have money to travel to a health facility. Some possibility to stay at home, they don't get permission from husband to go visit due to their role of taking care of the family. That's North region in Kenya. In North part, there are fewer health facilities and lack of resources also contribute. Looking at other regions, for example, some fail to go out of ignorance brought by low literacy. The biggest problem for pregnant women now is complications arising during pregnancy or delivery that threaten the lives of the mother and fetus. Without close monitoring and skilled health care, maternal and neonatal mortality rises (Ms. Hellen)
Q.Thank you for your presentation. I'm Natsumi from PHC Corporation. I'm very surprised Maternal mortality rate in Kenya. I want to know about education for the doctors. In Kenya, do you already use similar machine like CTG or do you have another education to doctor to tell them how to use Melody i? (Ms. Nanbu, PHC Corp.)
A.The OB-doctors use normal CTG, not iCTG. In all the 47 counties, there is one referral hospital. The referral hospitals have CTGs and an average of two OB-doctors. Health centers have insufficient resources including midwives and doctors. Lack of emergency facilities prompt health centers to refer patients to referral hospitals which are at an average distance of 6km. The OB-doctors are knowledgeable on CTG devise use. Birth delivery complications e.g. Neonatal sepsis caused by bacteria, eclampsia, and preeclampsia. Inadequate monitoring by skilled health professionals. Ratio of skilled staff to patient during delivery in Kenya is 16:100,000 while that of neonatal care is 153:100,000 WHO recommends a ratio of 36:100,000 for delivery and 356:100,000 for neonatal care (Ms. Hellen)
Q.I'm Ozaki from PHC Corporation, thank you for great story. I understand Kenya's circumstances about internet network. I'd like to know about hospital network. For example, transfer to patient another hospital, or about referral system. (Mr. Ozaki, PHC Corp.)
A.Thank you so much for your question. I mentioned about "Challenges", inadequate expertise and complex referral systems. I have a close relative who is involved in transfer of patients from health center to referral hospital. I learned from her about referral systems which is complex. There's no ICT system, During the referral, a mobile phone is used to communicate. No information of patient is available in an online system. The information is provided through mobile phone and in filled out print forms.
(Ms. Hellen)
- 4.「遠隔・非接触的血行状態モニタリング装置「魔法の鏡」のクラウド化」
東北大学 サイバーサイエンスセンター 先端情報技術研究部 教授 吉澤 誠氏より、「遠隔・非接触的血行状態モニタリング装置「魔法の鏡」のクラウド化」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.これまで顔で測定するというのは難しいとされていたが、測定する信号面からの特徴というのはどうなっているのかお聞かせいただきたい。(大家副座長)
A.レーザースペクトル法という方法があり、レーザーを当てて、当てた部分の光を解析し、それを全てスキャンという方法。これが一番確実だとされていた。ただし、絶対値を測る、血流量は測ることができなくて、血流の速度の相対値が出るわけで、血流分布が測れると。これを分析すると脈が測れるのだが、レーザーを当てて解析するということで一台700万円くらいする。ところが、先ほどお見せしたものはパソコン一台あればよい。これ以外に何もいらない。フロントカメラを使って、解析したので、追加投資は何もいらない。レーザースペクトル法というのは、やはり距離が常に一定でなければいけないし、外光が入ってもダメだと色々な制約があり、じーっとしていないと測れない。我々が開発している方法では、ウェブカメラでも十分で、照明も普通の照明でOK。ただし、十分明るくなくてはならない。また、顔が動いたり、しゃべったり、光が明滅したりすると途端に雑音まみれになる。この方法を自動車で使いたいというメーカーがたくさんいるのだが、自動車というのは一番悪環境で、走るたびに光が流れる、振動がある、そのため、自動車ではなかなかとれない。しかし、振動がなければ可視光線のゆらぎに関しては赤外光をアクティブに当てて、赤外光だけで分析するととれるようになっている。あとは、体の振動や表情だが、四六時中取ろうというところまではいっていない。とれるところまではとれるというくらいだと考えていただければ。(吉澤氏)
Q.我々、前々回血圧の脈波から心房細動が非常に効率的に診断できるということを発表したのだが、心房細動を見つければ、脳梗塞の半分くらいはDOACという薬を使うことによって減らすことができるということで、現在我々は香川県で心房細動による脳梗塞をなくそうというプロジェクトを大学と一緒にすすめている。その中で吉澤先生のご発表を お聞きした時に、血圧計もいいけど、もしもこれでできたら素晴らしいなと。鏡を見ただけで心房細動ですよということが分かるような気がしており、今回無理矢理、先生においでいただいた。ぜひこれからも香川の取り組みと一緒にやっていただければ。(原座長)
A.原先生方のシステムはすでにクラウド化が進んでいるので、そこにのせるだけでできる。しかもセンサーデバイスはスマホだけでいい。何もいらない。明日にでもできそうな感じ。
(吉澤氏)Q.眼科用のあごを乗せて固定させるような装置がないと動いてしまうが・・・(原座長)
A.どうしても動いたりしゃべったりしてしまうが、計測はじっとしていなくてはならない。(吉澤氏)
Q.粟島の心房細動の患者さんに使っていただいてありがとうございました。毎週、私が診察している粟島の診療所で会っている80歳をすぎている患者さんだが、心房細動でエリキュースという薬を飲んでいる。老人会の会長さんでもあり、大変よく対応していただいてい る。(原座長)
A.この方に関しては顔ではなく、手のひらで計測している。顔の中でよくとれるのは、額と頬と手のひらになる。(吉澤氏)
Q.心拍のゆらぎというか、心房細動、不整脈では非常に特徴的な波形のパターンが出てくる。そういったところ、ぜひご支援いただきたい。(原座長)
A.今日、CACさんがいらしているが、メーカーの方々と一緒に開発していこうと考えている。(吉澤氏)
Q.血圧計の会社の方もおられるが、何かコメントを。(原座長)
Q.素晴らしい発表をありがとうございました。私共、血圧計のメーカーだが、未来が見えてきたなという感じがした。ひとつ質問で、血圧との相関が0.6ぐらいということだが、血圧は測定する部分によって変わってくると思うが、例えば、心臓付近の血圧の方が相関が高くなるのだろうか。(エーアンドデー 板良敷氏)
A.相関という意味ではどこで取っても相関はあるのだが、ただし、絶対値は今のところ出てこない。今度、特許を出願した方法では、手の高低差により、絶対値をかけているものと同じになり、手を下の所で測った時の振幅と、上に持ち上げた時の振幅は、上の方が大きくなる。その比が絶対値の構成に役立つため、絶対値まで出そうとしている。(吉澤氏)
Q.実は私共もカフを使わない血圧計の開発を行っていたのだが、今、厚労関係の所でだいぶハードルを何重にもかけられて苦労している。医療機器の実用化への見通しを教えていただきたい。(エーアンドデー 板良敷氏)
A.医療機器にするとなると、非常に高いハードルがある。例えば、血圧サージを計測すると。お風呂に入る前と後でだいぶ下がったり、急に上がったりする。それだけを検出するということに特化すれば、ハードルが低くなるのではないか。(吉澤氏)
Q.顔からとる時に、例えば蛍光灯は地域によって周波数が変わったり、カメラによってもスマホなどメーカーによってシャッタースピードが変わったりすると思うのだが、そのあたりはどうなのだろうか。(メロディ 二ノ宮氏)
A.周波数についてはモニタリングで全く問題ない。一定の照度が保たれていること、緑色の成分が含まれていること、この2つがあればよい。黄味がかっても何でも結構。緑色成分が一定の照度で当たっていればいい。暗いとだめだが、明るすぎてもハレーションが起こり、飽和してしまうとだめなのだが、その間であればいくらでもとれる。問題は、顔が動いたりするとかなり雑音が入る。あご台に乗せればいいが、わざわざあご台に乗せて測るんだったら血圧計で測ったらいいのではないかと。(吉澤氏)
Q.活用方法は違うが、このシステムと同じような形で、コンビニで強盗が入るのを事前に感知するようなDefender-Xというものがあるが、あの場合手のひらとかではなく、顔の画面を見て、色が赤くなったりしたら危険だということが分かったりするが、ソフトの話しをして恐縮だが、そのソフトは事前に犯罪等予防することが目的だが、一歩間違えると誤認逮捕の可能性も出てくる。そのあたりはどのように考えればいいのだろうか。(香川大学 肥塚氏)
A.普通の監視カメラはフレームレートがかなり遅い。少なくとも30フレーム以上のレートで出さなければいけないので、監視カメラで我々の方法が使えるかというと、相当フレームレートが高くて、且つ解像度が高いものでないといけない。あと、原理が違う。防犯カメラの認識の方は、おそらく動きの方に主眼を置いて、微小振動などをとるといった話を聞いている。そのあたり、ちょっと違うと思う。今、CACさんもやっているが、画面の中に複数人いた時に、同時にとるといった別の使い方もできる。監視カメラの世界でも、我々の方法と似たようなことをやり始めると思う。原理は違うが、同じカメラを使っているので、同じことをやろうとしていると考えている。(吉澤氏)
- 5.「遠隔医療の日米比較検討」
PHC株式会社 メディコム事業部 事業企画部 ヘルスケアサービス事業推進室 ヘルスケアサービス事業推進室長 尾崎 亘彦氏、高西 由衣氏より、「遠隔医療の日米比較検討」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.フレームレートはどれくらいだろうか。(東北大学 吉澤氏)
A. 正確な数字は分からないが、十分速い数字になっており、着目すべきは帯域で、700kbps程度の低帯域でもできるような処理がなされている。(尾崎氏)
*(後日調査 フレームレートは30fps)Q.ローカルのカメラの方は30フレーム以上出ていると思うのだが、ネット環境が介在した後、劣化しないかどうか。(吉澤氏)
A.現地は24fpsだと思うが、インターネットを介した場合、劣化するかどうか、申し訳ない が情報を持ち合わせていないが、確か、12fpsくらいだったように記憶している。(尾崎氏)
Q.私が発表したシステムは、限界が20フレーム。それ以上下がってしまうと、心拍数の誤差が大きすぎてしまう。30フレーム近くでずっと維持できれば、このシステムに入れることも可能。解像度は全く問題ないくらい高いと思う。5Gになったら、それらの問題はなくなると思う。(吉澤氏)
Q.ネットワーク上で使う場合、圧縮されると思うが、フレームレートの問題以外にも、圧縮のやり方によっては、情報が失われてしまうことがあると思う。圧縮のやり方にバリエーションを持たせて変えていくということもあり得るのだろうか。(大家副座長)
A.今、モバイルから見ていただいたが、PC環境からできるソフトがあり、コントロール画面で、ガンマ値や明度等の調整ができるようになっている。フレームレートを確保しているかどうかといった帯域の状況のモニタリングなどもできるような形になっている。(尾崎氏)
A.圧縮をかけられるとフレーム間の動的情報が失われてしまう。今のところ、10分の1くらいだったら大丈夫だが、100分の1くらいで圧縮をかけてしまうと、だいたい、止まっている画面を圧縮するということは、止まった情報は全部圧縮がかかってしまう。動いていないとだめ。でも画面は止まっているという。そのへんの矛盾が出てくるのでなかなかうまくいかない。帯域が太ければいいというのではなくて、確かに圧縮率をあまりかけないようにしないといけないということだと思う。(吉澤氏)
Q.いつも思うのだが、アメリカでは遠隔妊婦検診がなかなか普及していないように思われる。一番大事な胎児心拍数に関して、あまりされていないようだ。我々はASEANに関してはJICAのプロジェクトで行って、ABE initiativeも含めて、アフリカを考えており、あと、来週尾形社長はデュッセルドルフに行ってEUに向けて発表する。ぜひアメリカの方に我々のシステムを宣伝してほしい。ご支援いただきたい。(原座長)
A.我々も新規事業として、日本を中心に展開していこうと考えているが、全米のチャンネル等を持った協業会社さんとか、色々な関係性を通じて情報入手に努めてまいりたい。(尾崎氏)
- 6.「MaaSで地方創生の起爆剤になるか?
― ―くらし安全安心な街づくりの視点から― ―」香川大学 法学部 教授 肥塚 肇雄氏より、「MaaSで地方創生の起爆剤になるか?― ― くらし安全安心な街づくりの視点から― ―」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.私はMaaS自体あまり知らないのだが、Uberというのがあり、数年前に利用したことがある。非常に便利で、スマホを操作すればすぐに車が来てくれた。日本ではタクシー業界等色々と揉めたりしているようだが、Uberのようなものを入れたら手っ取り早いような気がするが、いかがだろうか。(上野氏)
A.アメリカは公共交通機関が、アムトラックが1本走っていて、あとは全て自動車社会。社会的環境としてUberが成功しやすいが、日本では鉄道がしっかり敷かれていて、それを基本として公共交通網を作っていかなければならないが、現実的には税金が投入されるのは道路。そして、日本の基幹産業となるのは、車なので、どうしても道路の方に税金が投入される。それでは、民間の鉄道やJRに税金が投入されているかというと、新しい鉄道をひきますよとなっても、自分でやりなさいと言った具合。なかなか、公共交通網が充実していないところがある。しかし、Uberみたいなサービスが入ってきたらどうなるのかというと、ただですら、バスには補助金をたくさん出している。それでもやむなく廃線するところが出てくる。おそらくもっと加速すると思う。果たしてUberが公共交通機関となって代 わるというと難しいと思う。通院弱者や買い物弱者の方たちは、なかなか足が確保できなくなると考えられる。私の考えでは、公共交通網を充実させることを柱に据えて、そこから、医療や防災も含めて色々なサービスを提供するといった街づくりをしていく、税金を納めている消費者である私達が考えていく発想が大事だと思う。(肥塚氏)
Q.今のお話しでは、もっとローカルな視点で見て、地元の鉄道やバスをどう生かすかということが大事だと分かった。(上野氏)
A.もちろんシェアリングはこれから入ってくると思うので、私は「補充」だと思う。第三次交通という形になってきて、最終的にはヨーロッパでは電動化されたキックボードがある。日本では原付バイクと一緒なので、免許、ナンバープレート、ヘルメットが必要。それではイノベーションは起きない。そのあたりが課題だと思う。(肥塚氏)
Q.MaaSは全国、色々なところで行われているため、高松で特色を出しにくいと言われているが、高松の場合、海も離島もあり、都市部もある。非常にコンパクトな県なので適していると思う。また、海の上でのMaaSをどうするか、ドローンでのMaaSをどうするか、そういった立体的なイメージで考えられていると思うがいかがだろうか。(原座長)
A.まず、海上となると、自動航行船というものまで視野に入れると非常に難しいと思う。規制がありすぎる。自動運転が社会実装できないうちに、自動航行船はまず無理だと思う。法規制を相当撤廃しない限りは。条約があって、そこから国内法があって、また船の中というのは労働法の特殊なものが入ってきている。大変難しい。(肥塚氏)
Q.かもめやさんが来られているのでコメントをお願いしたい。(原座長)
A.まさに法的な観点から言うと、まだまだ勉強が足りず、先生からお知恵をいただきながら、ご一緒に取り組みをさせていただける機会があればありがたいと思っている。(かもめや 正木氏)
Q.かもめやさんについては、ネットで見ていただくと分かるが、日本国内のベンチャー企業でも非常に注目されている企業で、現在、香川県をドローンの聖地にしようと頑張っている。そこで、法的な側面も多いので、ぜひ先生のご支援をお願いしたい。(原座長)
A.はい、もちろん。MaaSは風呂敷が広すぎるので、今日は地上の話に限らせていただいた。(肥塚氏)
Q.基本的な用語の定義で、最近、〜as a service系が増えているが、この場合、理解する際に、既存の公共交通機関は役務の提供なので、それをすなわちMaaSと考えてよいのかどうかということと、元々、as a serviceが出たのが、as an assetの対義語として出てきたので、assetとしての自家用車から、例えばカーシェアリングとなる、そのような転換のものに対してMaaSを用いているのか、そのあたりお聞かせいただきたい。(T-ICU 小 倉氏)
A.Transportという言葉で言うと、事業者が人を運ぶということ、運送法や運送契約というのは事業者の視点だと思う。MaaS、Mobility as a Serviceというのは、乗客、いわゆる、私達の立場から再構成したもので、消費者からすると、どういう形で便利に移動できるのか。また、移動というのも、私達を主体とした言葉なので、私達の観点から再構成した言葉で、色々と不便がある所は撤廃してシームレスに利便性を高めましょうという、そういう話だと思う。ヨーロッパでは、街を作っていた城壁があって、その部分の内側は歩いていく、そこで住みやすい空間を作っていくのはやりやすいが、日本の場合、なかなかそれはできないところがある。シェアリングの話も結局、自動車を減らしましょうという話だと思う。自動車を減らしていって、例えば、自動車を保有しているが1年間に使っているパーセンテージが何パーセントかというデータがあり、8%だったと記憶しているのだが、それでは、あと92%は使っていないのかと、そう、使っていない。そんなもったいないことはないでしょうと。合理性から考えた時に、シェアリングしてお互いにシェアしましょうという話になっていくと思う。無駄なものをなくすということ。それは消費者の視点だと思う。(肥塚氏)
Q.交通は人が移動するためにあるものだが、どの程度の人の密度までカバーすべきなのだろうか。(大家副座長)
A.はい、もちろん。MaaSは風呂敷が広すぎるので、今日は地上の話に限らせていただいた。(肥塚氏)
Q.MaaSで一番大事なことは人口密度だと思う。人口密度が高ければ高いほど、MaaSはやりやすい。しかし、空白地帯をどうするかということは、税金の話で、行政がどこまで提供できるのかということになっている。それは、費用がかかる話であり、充実させればさせるほど、住民の税金という形で負担をお願いしなければならない。そのあたりの調整が非常に難しい。競争領域では競争したらいいが、空白領域は税金でどこまでできるか、限界があると思う。そういう意味ではコンパクト化していかなければならない。(肥塚氏)
- 7.「生涯現役社会の実現に向けて〜次世代ヘルスケア産業の創出〜」
経済産業省 四国経済産業局 地域経済部 ヘルスケア産業室 室長 三好 正彦氏より、 「生涯現役社会の実現に向けて〜次世代ヘルスケア産業の創出〜」の発表があった。
【質疑応答】
Q.ご発表の生活・情報産業の方向性、これからの取組のところで、原先生もK-MIXを作られた時に合意のことを仰っていたが、私も合意については大事なことだと考えている。この場合、情報を共有化してプラットフォームを作るということだが、合意形成というのはどういう形で取るのか。例えば、スライドの中に金融・保険とあるが、保険会社はデータを購入して、それを活用してサービスなり、保険商品開発に利用していると聞いている。データには価値があり、購入しなければならないという部分もある。また、お金になったとしても、それを第三者に提供したくないといった貴重なデータもあるので、どうやって合意形成されるのかお聞かせいただければ。(肥塚氏)
A.今後、どのような形になっていくのか私共も注視している。どういうルールでやっていくのか、どこまでやっていくのかということがあると思う。そのあたりはどこかの機関が管理をしてその中で、個人の情報で出せないところは秘匿し、利用できる範囲で利用していくようになるのかどうか。方向としては、皆で情報を利用することで、新しいシステムや、新しいサービスの創出を今後図ってかないといけないという風に考えているのではないかと。公的保険系で国民の方々の健康を維持していくこともなかなか難しくなってくる時代になっていると思う。できるだけ民間のサービスを効果的に利用できやすい、そういった仕組みが必要になると注視している。(三好氏)
- 8.「これからの健康医療情報プラットフォームに必要なこと
〜情報提供・閲覧の在り方〜」 メディカル・データ・ビジョン株式会社ゼネラルマネージャ 地域連携推進室長 浅野 孝仁氏より、「これからの健康医療情報プラットフォームに必要なこと〜情報提供・閲覧の在り方〜」について発表があった。【質疑応答】
Q.データ分析をされていると思うが、DPCとPHRのデータが合わさると、どういうデータ分析ができるとお考えかお聞かせいただきたい。(PHC 尾崎氏)
A.今、主に行っているデータ分析というのは、EVEという商品のDPCデータを使って、これはあくまでも病院様向け、病院の経営を支援するようなサービスを提供させていただいてる。ここに電子カルテのデータが入ってくるとなると、全く、ディメンションが違うような分析になると思う。DPCのデータは匿名加工して、個人情報は一切分からない状況。このビジネスをする前に厚労省、経産省、個人情報保護法も含め、あらゆる面から検討した。アカデミックな分野でも、ある疾患のディメンションからDPCデータを全部横に並べて、どういう薬剤がどういうタイミングで何歳くらいの人にどういうイベントが発生した時に投与されているか等、そういった分析はしている。DPCだけでもそこまでできるので、そこに電子カルテのデータが入ってくると、より深い、粒度の細かい分析ができると考えている。具体的には、そこまでのデータの分析はしていないが、さらにより深い分析と、県や自治体向けには、医療行政をどのようにすればよいか等も含め、これらは先生方と一緒にやっていくことだと思うが、国民全体がどういう医療を受ければ一番ハッピーになるか、もしくは医療費が下がるかとか、そういったところのデータの分析もできればいいと考えている。(浅野氏)
Q.こういった医療の情報は非常に貴重な情報だと思うが、現在考えられているデータの利活用について、ヘルスケアに通じるものなのか、例えば、情報銀行のようにマーケティングであったりとか、ディテールをこれから使いたいという方も増えてくると思うが、そういった展開も視野に入れているのかどうかお聞かせいただきたい。(デジタルガレージ 朝田氏)
A.回答をまず最初に言うと、まだ視野には入れていない。ただ、最近情報銀行において、P認定とか色々と始まっており、P認定を取得しているところでは例えば三井住友信託銀行があるが他の銀行からも「何か一緒にできませんか」といったお話しをいただいているのは事実。ただあくまで医療のデータなので、慎重に扱わなければならない。その点を崩さずにどうやったらできるか、考えていきたいと思っている。それをやるためには、大学と始めは実証実験で始めるといったフェーズが必要なのではないかと感じている。将来的にはできる範囲からやっていきたいと考えている。ただ、個人のデータなので、十分に注意をしてということを念頭に置きながらという形になる。(浅野氏)
Q.貴重な情報ゆえに、セキュアな状態で患者さん個人にコントロールしていただくという前提でお渡しするものの、個人の患者さんが提供された後で、どんどん流通し、元々誰が出したんだといった時に企業が追及されるとなると、今度病院の先生方は情報を出したくないという場合も出てくると思う。リスクへの対応の仕方や、すでに予見されている事象に対して、どういうデータの持ち方をしたらよいか、どのようにセキュリティを管理するか等、お聞かせいただけないだろうか。(デジタルガレージ 浅野氏)
A.現在、ありとあらゆるリスク対応はしている。HISからデータをお預かりする時も、一回バックアップは取らせていただくが、3省3ガイドラインに準拠したデータセンターに病院様の領域でちゃんと取らせていただいて、下りはあるけれど、絶対上りはない。あとは、基本的には患者さん自身の同意を取ったデータのみ、患者さん自身が見ることができる。それがまず一つ。また、患者さんが「この人には見せたい」「この人には見せたくない」ということがあると思う。そこで、即座にそれができるようなことをやっていく。ログも全部取っているので、どこでどうなったかというのは分かるようになっている。これから通信技術がもっと発達していって、VPNを提供している事業者さんと話しをしているが、よりセキュアなやり方はないかとか、ブロックチェーンをどうするかといったことも含めて検討はしている。どちらかの大学と実証研究を経て、世の中に出していくべきものだなと思っている。(浅野氏)
Q.御社サービスの特徴として、個人同意に基づいたデータコントロールとあるが、相手方の中に保険会社が入っているのかといった問題や、相手方のリストが会社の名前だけだと分からないし、相手方だけではなくて、どういう活用方法をするのかということも問題になってくると思う。実際どういう形で契約されるのかお聞かせいただきたい。(肥 塚氏)
A.まず、カルテコを使う時にCADAカードもセットで登録していただくことになっている。CADAカードを作る時に、病院様が「うちは入院から始めたい」となると入院の窓口で、対面でドキュメントを用意して、そこで説明もちゃんとさせていただき、明記もしている。ただ、リストを外に出すことは一切しておらず、例えば「このデータを医療の発展 のために使います」等、ドキュメントに細かく書いてあるのだが、サインで同意をしていただいた上で、それをスキャニングして保存をしてというような同意を全部取っている。外来の場合は、外来のカウンターで行うが、一部病院さんでは「カルテコステーション」というものを作っていただいており、そこでサインをして同意をした上で活用し ていただくという形ですすめている。(浅野氏)
Q.データが生のデータではなくて、これからどんどんキャッシュレスになって例えば食料品などクレジットカードで購入する場合、Aさんはどういった食生活を送っているのか、現在、こういった既往症があって、病気を抱えていると、そのデータ分析をした結果というもの、それをデータとして使う形になるのだろうか。
A.クレジット会社のデータの番号や銀行口座の番号は我々は番号のみしか認識していないので、そこから先というのは情報としては持っていない。あくまで、医療で発生したデータ情報だけという形。(浅野氏)
4.閉会
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