お知らせ&イベント
「ヘルスケア・イノベーション・フォーラム」
第32回事例研究部会議事要旨
1.開催日時・場所
【日時】平成30年11月16日(金)13:15〜17:00
【場所】高松サンポート合同庁舎 アイホール
【出席】40名
2.開会
3.議事概要
(1)事例研究
- 1.「香川大学のASEAN諸国との国際連携戦略:ミャンマーとの国際交流について」
香川大学 副学長/インターナショナルオフィス長 徳田 雅明氏より「香川大学のASEAN諸国との国際連携戦略:ミャンマーとの国際交流について」の発表があった。
【質疑応答】
Q.教育機関としてこのような取り組みの結果、どのような成果がもたらされるのだろうか。学生にグローバル意識が芽生え、高まっていく、教育プラスαの人の資質としてのレベルアップに繋がっていくということだろうか。(大家副座長)
A.そうなると思う。グローバル展開だけではなく、企業が求める人材として問題解決能力があるとか、コミュニケーション能力があるとか、プレゼンテーション能力があるとか、企画力があるとか、そういった能力があると思うが、学生が世界に出ていく、特に日本に比べるとまだ開発途上の国に出ていくと、自分で色々なことを工夫してやらなければならないし、自分がやりたいことを伝えて、コミュニケーションをとって現地の人と一緒にやっていくというのはまさにうってつけのトレーニングであり、教育。そういった所で勉強してくれた学生は日本に帰ってきて力を発揮すれば、何でもできるという自信をつけてくれるのではないか。もう一つ、こういうプロジェクトにアカデミアが関わることが重要な意味を持っていると思う。メロディの尾形社長と進めているチェンマイのプロジェクトについても、あちらではチェンマイ大学に入ってもらい、こちらでは香川大学が入ることで、一定の研究の質的な保障と共に、中立的なアカデミアがきちんと入って運営しているというサポートが見えるということは、興味を持っている方にとっては非常に大きな安心感を与えてくれることになると思っている。そういう意味で、重要な役割が果たせるのではないか。(徳田副学長)
Q.派遣の際に、手を挙げて行きたいという学生の比率、また、どんな国へ行っているのか教えていただきたい。(BHN榑松氏)
A.短期で行きたいという学生は結構いるのだが、我々が目標にしている長期で派遣するとい う学生はなかなか苦労しているのが実状。特に3、4年生になると就活があって、今は学生にとって有利な売り手市場であり、いいところに就職できるということなので、海外へ行 って研修しようという気持ちでいた学生も、やはり就活の方に行ってしまうというような状況があるというのが一つ。長期派遣は学生にとってハードルが高く、だいたい長期で行きたいというのは女子学生。長期派遣で学生を集めるのは苦労しているが、1週間、2週間の短期派遣についてはたくさん希望者がいる。国は主にタイ、インドネシア、ベトナムといった国々に行くことが多い。その他、アメリカやドイツ、フランスといったヨーロッパ圏もあるが、比率的にはそんなに高くない。(徳田副学長)
Q.大企業ではグローバル人材育成に危惧している。そのため、長期で海外に行かれる学生こそ、今企業に求められている人材だと思う。(BHN榑松氏)
A.そのことをぜひ学生に訴えたいと思う。(徳田副学長)
Q.香川大学の国際交流戦略を非常に分かりやすく説明していただきありがとうございます。その中で、グローカル人材育成事業ということで、地域企業との連携のお話しがあったが、 具体的に学生が企業にインターンに行くとか、香川大学が得意とするベンチャー企業家を育てるといった取り組みがあれば紹介いただきたい。(JICA四国センター福永氏)
A.インターンシップを入れ込んだ、国際海外派遣という事業は、一番端的な例は「トビタテ!留学JAPAN」という文科省のプロジェクト。全国版と地域育成コースという地域で行うプロジェクトがあり、県知事がトップで香川大学に事務局があり私共が担当しているのだが、海外に留学する期間は1か月から2年まで自由に選べる。その留学前後に地域の企業においてインターンシップを行うことになっている。今まで10数名の学生がこのプロジェクトに参加したが、地域の様々な企業、その中には瀬戸内海放送といったマスコミも含まれたり、希少糖関係の企業に行ったり、タダノに行ったりと香川県で現在成長戦略を立てているが、そういったところを関連付けたインターンシップのお願いをしている。ただ、まだまだ十分ではない。もっと多くの企業に手を挙げていただいて学生を受け入れていただけたらと考えている。ぜひご協力をよろしくお願いします。(徳田副学長)
Q.なかなか男子学生が留学に行かないと言う話があったが、行きたい人はどんどん行ってしまう、やりたくない人はやらない、それをどう変えるかというのが難しいと思うが、何か大学で取り組まれていることがあれば教えていただきたい。(大家副座長)
A.我々はそういう学生をどうやって勇気づけるかという取り組みとして、English Cafeという留学生と日本人学生が講義以外で交流できる場所を設け、例えばお昼休みや放課後に交流してもらう機会を作っている。男子学生でもグループだったらCafeに来る。まず、グループで来てもらってそこから少しずつ目を開けてもらって、一人でも大丈夫だという自信をつけてもらうという、回りくどい戦略を立てている。あとはもう一つ、留学に行った先輩から「大丈夫だよ、こんなに楽しいんだよ」というようなことを言ってもらうように、我々からではなく、留学経験をした男子学生から男子学生へというところを強めていっている状況。(徳田副学長)
- 2.−注目されるオンライン診療−
「オンラインで広がる医療現場最前線−東海テレビ「スイッチ!」生放送出演−」香川大学瀬戸内圏研究センター 特任教授 原 量宏氏より「オンラインで広がる医療現場最前線−東海テレビ「スイッチ!」生放送出演−」の発表があった。
【質疑応答】
Q.医療ではない計測データなどの測定がだんだんと増えているが、お医者さんの登場機会が増えてきた時に医療と医療ではないところというのは、先生はどのようなお考えをお持ちだろうか。(大家副座長)
A.先日もニュースで健康診断で肺がんの見落としがあって何人か亡くなったということだが、その場合にこれまでデータを医療機関で見るということをあまりやってこなかったので、そういった見落としが起こりやすいのかなと思った。香川県では済生丸という、離島の健康管理を行っている船があり、そのデータはK-MIX+で見ることができる。実際に離島の患者さんの心電図なども非常にきれいに見える。そうすると、心房細動などが確実に診断できるということで、今後は健康診断と医療機関がもっともっと密に連携していけば、見落としはまずなくなるのではないかと考えている。(原座長)
Q.健康診断だと年1回だが、先ほど出てきたdurantaのように胸につけてずっと計測する場合、医療に近い情報のため、データを高密度に捉えている。そういう状況の中で、お医者さんが登場する機会が増えてくるとなると、ヘルスケアという中で、今まで個人に依存してきた部分とお医者さんが関与する部分の比率がだいぶ変わってきている。医療はどこまでカバーするのだろうという疑問点が出てくるのだが。(大家副座長)
A.医療の中で使われるのは、医療機器として認められなければいけない。今後、在宅用の医療機器はハードルは高いが医療機器として認められて、診療報酬がつくことによって情報が連携できるのではないか。これまで在宅でデータが送れると様々な企業が言っていたが、なかなか長続きしない。自主的にお金を出すとなると続かない。万歩計についても、例えば診療報酬がつくとなればガラっと状況は変わると思う。そのあたり工夫が必要だと考えている。(原座長)
Q.オンライン診療の可能性について、先生の発表で強く感じることができたのだが、お話しの中であった、セカンドオピニオンといった形の再診断の観点で、今回香川県のK-MIXでは140以上の病院がつながって、様々な医療情報について病院間で共有ができるということで、将来的に高齢化がますます進んで、予防という観点も大事になると思う。医療従事者の方も特に地方と呼ばれる地域においては減っていく可能性がある中で、こういった画像診断等を先生だけではなく、AIを使ってリスクを把握するというのが、ビッグデータという観点だが、オンラインと相まって色々なデータから、例えば、がんのリスクがありそうな人をAIが見つけて、それを先生が確認するという形で、よりデータをうまく活用するという方法が今後ありうるのか教えていただきたい。(JICA四国センター波多野氏)
A.画像でも特にきれいなデータが集まってきたら、肺がんなどの診断の確率も上がる。肺がんの画像診断は非常に長い歴史がある。 その中で、前回と今回の画像を比べる場合、色々な手法を組み合わせることによって自動診断はほぼできるであろうと言われている。我々が一番関心があるのは胎児心拍数を自動的に診断していくということ。これまでの自動診断のプログラム、ソフトもあるが、非常にきれいに胎児心拍数が届くのでサーバ上で自動診断ができるようJICAのプロジェクトでも取り組んでいきたい。(原座長)
- 3.「チェンマイおよびミャンマーでのプチCTG導入報告」
メロディ・インターナショナル株式会社 CEO 尾形 優子氏より「チェンマイおよびミャンマーでのプチCTG導入報告」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.ヤンゴンからカレン州の方までは車で移動したのだろうか、それとも川をボートで渡ったり?
(BHN榑松氏)A.でこぼこの道を6時間少しかけて全て車で移動した。(尾形氏)
Q.そういう所こそ、遠隔医療がほしい場所だと思う。特にカイン州、ラカイン州はタイに避難していた難民の方がどんどん帰還しており、インフラ、学校、電気がない。実は私共のBHNでは、そういう所に太陽光発電システムを入れたりして協力を行っている。ぜひこのプロジェクトをさらに進めていただければという期待をしている。(BHN榑松氏)
A.チェンマイに行った時には、ミャンマーの山間部の方たちもチェンマイで診療を受けているということもあったが、やはり、自分たちの国で診療を受けたいという気持ちもあり、自分たちでプチCTGを使えるという風になれば素晴らしいことだと思う。(尾形氏)
Q.日本の場合、出産が行われる場所の多くは病院、クリニックである。タイやミャンマーでは自宅で出産する確率が極めて高いだろうという風に思うのだが、もしその比率が分かっていれば教えていただきたい。あと一つ、産婦人科が少ないということだが、自宅で赤ちゃんを取り上げるのは誰なのか、例えば日本で言うと助産師になるが、ミャンマーでは資格を持っていない方、昔で言うと産婆さんのような方が取り上げている可能性が高いと思う。妊婦さんと産婦人科の間をつなぐ方々への教育について、今後何か考えていることがあれば教えていただきたい。(瀬戸内圏 大西先生)
A.実際に行ってみると、自宅で出産される方は病院に来ていないので、統計の中に含まれないというのが実状。数を数えるようになるのが、最低でも村の診療所に来てくれているといったところからになるので、これから調べられたら調べていきたいが、なるべく診療所に来ていただくことも促していきたい。二つ目の質問について、最低でも村の診療所の助産師さん、看護師さんに診ていただいているのだが、産婆さんになると次の段階になるかと思う。助産師さん、看護師さんについては日本に来て実際の医療を見ていただいて、自分たちの国に帰って、自分たちがどうあるべきかを考えていただくのは非常に啓蒙になっているとこの3年間感じた。こういった日本との交流をしながら、やはり自分なりに考え ていただくというのが一番その国のためになっているし、続いていくのではないかと感じている。(尾形氏)
Q.胎児のバイタルサインからもう一段進むと妊婦さんのバイタルサインも同じような仕組みでとれると思うので、少し先のステージになるとは思うが、ぜひそういうところも視野に入れていただければ、赤ちゃんも妊婦さんも健康で妊娠ができるという世界に突入できると思う。そのような将来があればお聞かせいただきたい。(産総研 黒川氏)
A.確かにその通りだと思う。胎児のデータはこのように原先生が発明されたもので製品化できた。これにつける妊婦さんのデータを計測するものも非常に大切。妊婦さんと胎児の心拍データは少し違うが、胎児の心拍が低い場合、お母さんの心拍に近づくといったこともあり、そのあたりの区別はしているが、やはりより明確な区別をするためには、妊婦さんも測っていただくというようなことが必要になってくると思う。そのあたり、色々な企業とコラボしていきたいという気持ちはある。(尾形氏)
Q.本日のプレゼン全てに通じるところがあり、出た質問とも関係するのだが、SDGsの紹介があったが、SDGs以前はMDGs( Millennium Development Goals)として、達成できなかったゴールが二つほどあり、そのうちの一つが妊産婦と乳幼児の死亡率の改善ということ。今、 タイとミャンマーの例で出たが、途上国で共通して言えるのはどこも妊産婦、乳幼児の死亡率が高いということである。その理由の一つとしてreferralが機能していないことが挙げられる。先ほど、医師の数と看護師の数にについて驚異的な数字が提示されたが、パラメディックの数が地方に行けば行くほど少ない。ほとんど誰もいないと言った方が正しいのかもしれない。それでは、地方でどうやっていけばいいのか、タイ、ミャンマーの場合、世界で共通して言えることして、産婆さんがいらっしゃる。ただ、産婆さんは医療資格を有していない。どういった形で産婆さんがやっているかというと、よく言われるところの、暗黙知、或るいは伝統的にやっているので、一番安全な胎児を生むというのはニワトリを捧げること、これが一番重要だと。要はまだ呪術に頼っているところが非常に多い。我々からすると今の時代でとびっくりすると思うかもしれないが、ニワトリを準備しないと、子供が死んでしまうということで、妊産婦は精神的にプレッシャーがかかって、何としてでもニワトリをどこかから調達して、生贄にすることでということがまだまだ多い地域がたくさんある。あと、インフラが整っていない。ミャンマーなども典型的だと思うが日常的に洪水がおこるということは、病院へ行く道が遮断されてしまう、要は病院に行く手立てそのものがない。これがMDGsが達成できなかった大きな原因。そこで、一番重要なプレゼンがあったが、そこを繋ぐのは何かというと、医師を増やそうとしても難しいので、産婆さん、妊産婦、家族の意識を上げていくことが大切。その時に役立つのが母子手帳ということになる。他の国でも母子手帳はあるが、日本式の母子手帳がここまで拡大しているのは、圧倒的に内容が優れていること。それは周産期に合わせた診断等を義務付けていることと、親と子どもが一緒になっているということ。途上国でよくあるのは、親と子どもの手帳が分かれてしまって、記録が分断されてしまっている。そこに日本の母子手帳の 比較優位性があり、ニーズが高いということが言えるのではないか。したがって、日本のこういった課題が色々な国に役立っているところがあり、我々はODAで事業をやっているが、決して慈善事業ではなく、ODAの目的は国益であると明確に書いてあり、日本に何らかの利益をもたらさなければいけないといった時に、日本の企業のノウハウ、知識が活用できるところがたくさんあり、それを使っていただくプログラムを我々で準備している。特にITは、霞が関の方針もあってIT戦略ということで、有名なのは遠隔地をITでつなぐこと、この分野とあともう一つは防災ICT。途上国へ行くとびっくりするのは、どこへ行ってもスマホだけはあるということ。貧しいのになぜスマホだけ持っているのかと。スマホが使いこなせるので、要は日本のように物事を製造するようなプロセスを経ずに、ITの機器そのものはすでに入ってきている。そして、入ってきている以上、それを使いこなせる。したがって、ICTを使った方が相手にとっても非常に楽なこと。これからまさにこう いったものは、ニーズがあって且つ技術が活用できる、そして原先生が仰られた通り、エビデンスベースということ。学が入ることによって呪術に頼らない、科学的に正しいんだということを人々が理解しつつあるので、その三つが相まると、日本のものはかなり受け入れやすくなる。産学の皆さんにとっては色々なことが実証できて、且つ事業、商売につながる。我々からするとそれを活用させていただいて、SDGsの解決につながるということを目指している。(JICA四国センター 米林氏)
- 4.「日本ルーラルナーシング学会第13回学術集会を開催して」
日本ルーラルナーシング学会第13回学術集会長/香川大学瀬戸内圏研究センター 客員教授 大西 美智恵氏より、「日本ルーラルナーシング学会第13回学術集会を開催して」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.最初に「島」というのは定義が外周が0.1km以上という定義があったが、現在「ルーラル」という定義は何かあるのだろうか。(大家副座長)
A.「ルーラル」というのがなぜカタカナなのかというと、日本語に直すと「へき地」と言われることがあるが、「へき地」というのが一般的なニュアンスでの響きがポジティブかネガティブかというと、どうだろうか。そのようなことは関係ないと仰る方もいるかもしれないが、カタカナ表記にしている。(大西先生)
Q.こういう条件に合うと「ルーラル」だといったものはあるのだろうか。(大家副座長)
A.それは特にはないと思う。どこを起点にするのかによっても変わってくる。(大西先生)
- 5.「地域包括ケアにおける認知症についての取り組み」
株式会社ケアコム 商品企画グループ 北村 有岐氏より、「地域包括ケアにおける認知症についての取り組み」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.認知症という非常に難しい病気に対して、データ化に取り組まれているわけだが、この中で記録される情報は診断情報として、DASC21を用いる以外に多様な診断方法に関して何か取り組みをされているのだろうか。(大家副座長)
A.認知症のスコア化はMMSEやZaritと言われるやり方はある。これは我々の仕組みの話になるが、色々な質問項目を設定して、そこに対する点数づけが自動にできるようにしてあるので、今後新たなスコアが出てきたとしても対応可能。もう一方で、診断項目やスコア化する診断方法がいくつも出てくると、地域間、或るいは医療機関間、介護施設間での連携が非常に厳しくなってくることも事実であり、その点に関して苦慮している。(北村氏)
Q.認知症の診断自体も重要だが、進行をいかに緩めるかというところが重要だと思う。また例えばアリセプトといった薬の効果を持続的に評価していきエビデンスを出す際、どれくらいデータを出せそうだろうか。そのデータを出すことができれば、国の評価も高まって、製薬企業も関心を持つと思う。(原座長)
A.そういった意味で言うと、我々の投薬データの仕組みとして四国のある地域で、大体4〜5年分のデータを持っている地域がある。そこに対して、データ分析をかけるということは今まさにこれから取り組もうとしているところ。4〜5年で果たして言い切れるかという部分があるのだが、継続してやっていこうと思っている。(北村氏)
Q.介護保険主治医意見書等、毎年書かなければならないが、見てみると大部分が「前と同じ」と書いている。こういったシステムで書類が電子的にうまく連携すれば、主治医意見書がもっと現実を反映したものになると思う。役所に出す書類の連携について考えをお聞かせいただきたい。(原座長)
A.役所に出す書類との連携という意味で言えば、地域包括ケアシステム上に入れていただけるものであれば、自動的に連携できるので、一番いい仕組みだと思っている。原先生が仰った通り、問題は書きやすさ、書きにくさというところだと思うので、お医者様にとって使いやすいものであれば、個別にちゃんと患者さんを診た形での主治医意見書が出てくると考えている。(北村氏)
Q.実際に電子的に書き込む介護保険主治医意見書は電子カルテの中で住所と名前くらいしか連携していないので、こういった介護保険医療システムと連携するシステムを販売すれば、大変よく売れるのではないだろうか。(原座長)
A.我々もそのようにしたいと思っている。(北村氏)
Q.生活情報や環境の情報をどの程度の精度で、どんな内容を取っていくと有効な対応が取れると考えているだろうか。(大家副座長)先ほど話しにもあったが、認知症というものが治療という観点で言うと、なかなか効果的なものがないといった状況で、その一方、認知症が進むけれど、周りにとって問題が起こるような問題行動を抑えるためにはどうすればいいか、そのあたりの治験が必要になってくると思う。例えば、治療ではなく、ある種の対応を取った時に、その患者さんがどういった応答をするのかというデータをためることで、狂暴化する、或るいはふらふら出歩いてしまうなどを防ぐことだけでも家族にとってはプラスになると思う。(大家副座長)
A.そのあたりも考えているところで、発表の最後あたりで障害の方について話が出たが、障害の方々も普段の普通の生活をしている中で、いかに問題行動を抑制するかというところと、問題行動が発現する原因が何かを突き止めることが大事。ここが認知症の患者さんと障害者の方と違うところだが、障害を持つ方は障害に対するプロの支援員の方が付くことが多いが、認知症に関しては、認知症のプロの方が付くわけではなく、介護、または医療のプロの方が付くという点において少し違ってくるとは思う。ただ、分析をしなければいけないトリガーに関しては、どちらも生活情報がベースになっているはずなので、そういったことができると考えている。(北村氏)
Q.生活情報や環境の情報をどの程度の精度で、どんな内容を取っていくと有効な対応が取れると考えているだろうか。(大家副座長)
A.ここが非常に難しいところで、今のところ分かっている限りにおいて、少なくとも、食事と睡眠時間、その時の気候、気温の状況、また、まさにその場の状況、ノイジーな状況だったのか、光があふれているのかといった状況がいかにうまく観察できるかというところが一つ分かっているところではある。(北村氏)
- 6.「感染管理システムBACTWebの紹介とワクチン接種情報の有効活用」
株式会社テクノアスカ ITシステム部 部長 可児 忠夫氏より、「感染管理システムBACTWebの紹介とワクチン接種情報の有効活用」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.感染症に関してワクチンのお話しがあったが、海外に行かれた方で、渡航前にワクチン全てを接種する方が少なく、現地で感染し発症して問題が起きてしまうというケースが最近1〜2例あった。実はザンビアに行った方がマラリアに罹り、発症した時には休暇でトルコに行っており、トルコの病院へ行ったのだが、大きな病院だったにもかかわらず、最終的に亡くなってしまった。現地から「こういった症状が出たのだが」と日本に相談する、感染症の相談窓口といったネットワークはないだろうか。(BHN榑松氏)
A.現状ではお聞きしたことはないが、こういう感染症にはこんな症状が出る、そういう時はどういう対処をすればいいかというようなことをアプリ等で提供するようなことになるかと思う。(可児氏)
Q.PHRという言葉が出てきたが、その中で企業の管理するデータベースと個人の情報を扱うPHR、その関係というのは、PHRは完全に個人の管理下にあって、通常の企業の外にあると考えてよろしいのだろうか。(大家副座長)
A.このシステムとしては、企業からのアクセスはあくまでも参照とさせていただく。一覧を作る時は取り込んだ形で一覧を作るが、当然個人情報の法律に基づいて多目的での使用はできないし、廃棄の依頼があった時は必ず廃棄するといったルールの上に利用いただくのが大前提となっている。(可児氏)
Q.そうすると、ヘルスケアデータバンクの構想の話があったが、そういった形の中で、個人が管理していく、その情報を適切なシステムの下で相手に公表していってということだが、それは適切な企業であって、それ以外のところにも扱うことができるというものをテクノアスカさんとして構築しようとしているという解釈でよろしいだろうか。(大家副座長)
A.情報銀行などもあるが、そういったものとは少し毛色が違うかなという感じがしている。情報銀行だと、データをビッグデータとして利用して、他の目的に使うということで行っているが、そういったものではないので、目的外では利用しないと約束した形での提供であれば、それほど問題はないのではないかと考えている。(可児氏)
Q.逆に、許可という部分の定義によっては全く同じことになってしまうことも含んでいるということだろうか。例えば、共通的な目的に使いますというチェック項目を一つ作ってしまうと、それがデフォルトであれば基本的に今のデータの話と変わらなくなってしまう。(大家副座長)
A.そのあたりの扱いが難しいところだと考えている。(可児氏)
Q.ヘルスケア関係の様々なIoTデバイスからの自己管理について、情報の管理の部分で、色々なメーカーが色々な機器を作られている、そういった機器から自動的に取り込んでいくという構想を持っているのだろうか。(大家副座長)
A.その通り。様々なデバイス、プロトコルがあるが、そのあたりも出来るだけ統一した形でやっていくということを目指しているところもある。奇しくもIT検証産業協会で理事をさせていただいており、この協会では様々なデバイス、インターフェイスがあるが、そういったものを統一して接続性を良くするということに尽力している。どうしてもメーカーの力が強くなってくるとメーカー独自で、自分たちのメーカーだけで接続するという形が進んでしまうので、そのあたりを統一した形で持って行けるようにしたいと考えている。(可児氏)
Q.その時に、デバイスからくる情報を扱うのか、或いは、それぞれのメーカーが蓄えている情報をデータベース側から読める状態なのか、つまりユーザーID、パスワードという管理を経由して取り込んでくるという二つの発想があると思うのだが。実は産総研では、以前、後者の方で検討したことがある。結局、メーカーは独自の事業を展開しており、それを統合するというのはなかなか難しい。現実的にアクセスする窓口があるのであれば、窓口の手続きをソフト側が覚えてユーザーが操作するのと同じようにデータを持ってくるといったことも可能性としてはあると考えている。(大家副座長)
A.その可能性はあるし、必要だと思う。(可児氏)
- 7.「K-MIX+の新たな試み:遠隔脳卒中支援と調剤薬局連携」
香川大学医学部 教授 岡田 宏基氏より、「K-MIX+の新たな試み:遠隔脳卒中支援と調剤薬局連携」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.K-MIX+で読み取るだけで、お薬手帳を提示しなくても確認することができるとのことだが、例えば、K-MIX+に加入していないクリニック等でお薬を出す場合、何軒かの医療機関にかかっていて、お薬が全部把握されていない、そういった時に薬剤師さんが提示されたものについてK-MIX+の中に入れ込んでいくというのは、まだまだ出来ないのだろうか。(大西先生)
A.K-MIXに入っているところではできるが、入っていないところでは当然システムがないので、出来ない。今のところ、調剤薬局と中核病院のやり取りになるので、診療所間は出来ない。調剤薬局の方が中核病院にメッセージを送ることは出来る。(岡田先生)
Q.お年寄りの場合、たくさんのお薬を飲んでいて、薬の弊害、飲み合わせの問題が出てきている。それを調剤薬局の方が発見してくれるだろうか。(大西先生)
A.お薬手帳は非常に大きな役割を果たしていると思っていて、ある意味、電子お薬手帳の方がいいと考えている。K-MIXに加入しているかどうかが大きなバリアになっているので。皆さんにK-MIXに入っていただいて、全てのデータがここに入ってくれば、今のお薬手帳のような役割を果たせると思うが、まだそこまではいっていないという状況。そうなればいいなと考えている。(岡田先生)
Q.東日本大震災の災害時にも大変役に立っていると思う。(大西先生)
A.災害当時、カルテが流失して、診療ができなかったということもあったので、中核病院の情報があれば全然違うと思う。そういったことも将来に生かしていければ。(岡田先生)
Q.岡田先生に頑張っていただいてようやく調剤薬局との連携が実現するということになった。何年も前に電子処方箋プロジェクトを行った時に、古いお医者さんは薬剤師に病名等を教えたくないということだったが、そういった先生方も現役を去り、この頃の若いドクターはなるべく薬剤師にも情報を共有して一緒にやろうという風になってきている。元々香川大学医学部附属病院は、開院当時から院内の紙の処方箋にも病名はつけていた。全国の医科大学で香川医大(当時)が初めてだった。その頃、私は電子カルテの委員をしていたので、それを普通だと思っていたが、全国、他の地域では行っていなかった。そういう意味で、時代はわってきたということ。薬剤師側も病名を教えてもらうと、自分の責任が増えるため聞かない方がいいという方も多かったが、最近の薬剤師は6年制になり、意識がぐっと上がってきたということがある。また、今、K-MIX+を使って、中核病院と開業の先生が使う時に開業の先生側は1回300円入る。ということは、薬指導も、より密度の濃い指導を行うようになるため、50円でも100円でも、将来つけるような方向にすれば一気に広がる気がするのだが、岡田先生、いかがだろうか。(原座長)
A.オンライン診療が解禁されて、点が取れるようになったので、そういったことが調剤薬局でも電子化により加算がつけばいいと思う。(岡田先生)
Q.もう一点、今は中核病院の処方箋しか見ることができないことが最大の問題になっているが、実際には、99%の開業の先生でもレセプトは電子化している。レセプトの中にお薬の情報も入っているため、そこをうまく連携すればいいので、そちらもK-MIXに関連することとして医師会でやっていくといいと思うのだが。(原座長)
A.双方向性を実現するためには、やり方はなくはないのだが、先生もよくご存知のように、開業医さんが院外薬局を使っていれば、そこの院外薬局に情報が入り、打ち込むと。レセプトでもいいのだが、それをアップローダーというものをつかって吸い上げることができるようになっている。もう一つは検査情報だが、これはほとんど検査会社に出すので、そこの情報を取ってくれば開業医さんの情報も取ってこれる。そういったことを一括してやれば、双方向性ができるのだが、アップローダーを使う予算が今のところないので、技術的にできる見通しはあるが、どこかで予算がつけば全県下的にできて、双方向化が実現して診療所の情報もデータベースに入るということができると思っている。 (岡田先生)
Q.医療用のマイナンバーがあれば、検査会社のデータ等全てリンクできるので、そちらの方向で厚労省が進めていけば、全部の名寄せができると思う。(原座長)
A.電子カルテが入っている医療機関の開業医なら容易なのだが、まだ紙のカルテを使っているところもあり、そういう医療機関は先ほどのような方法で情報共有ができると思うので何とかしたいと考えている。(岡田先生)
Q.今回の調剤薬局のとの連携で、今の薬局の薬剤師さんの現状、例えば、検査値や病名の把握といったものを、おそらく調剤薬局もこれから勉強していかなければならないと思う。そういった時に、薬局同士の集まりや病院からのアプローチをかけてもらったり、または病院の薬剤師さんとの連携、こういったことについてはどのようにお考えだろうか。(永野氏)
A.今後の課題だが、まずこれを運営してみて、どういう問題や課題が出てくるのかということを探っていくことが大切。県の薬剤師会に話をした時に、病院の服薬指導も入れてほしいと言われて、なるほどなと思い、我々の方の中核病院のシステムを改修して、服薬指導の内容も出せるようにしようと考えている。そういったことで、病院でどう指導しているのかということは情報提供できる。仰ったように、今度は薬剤師間での集まりの時に我々も出かけて行きたい。病名については保険病名があるので、それをどう見分けるのか、一番初めの集まりの時に講習をしなければならないと思っている。検査値の見方についてはいいご提案だと思うので、機会を見つけて広めていけばより役に立つと思う。今後の課題として承っておきたい。(岡田先生)
- 8.「地域における健康増進と医療・介護のシームレスな連携の実現に向けて」
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 情報・人間工学領域 人間情報研究部門 研究部門長 佐藤 洋氏より、「地域における健康増進と医療・介護のシームレスな連携の実現に向けて」についての発表があった。
【質疑応答】
Q.発表にあった、はじめの一歩のワーキンググループの中で高齢者を含んだ就労環境について、「高齢者を含んだ」というのが非常に良いと思う。就労環境というのは、働くことありきになっているが、つまり高齢者は社会の中で一緒に活動するという切り口だが、働けないといけないと言うよりは、高齢者を含んだ社会貢献なり社会活動という切り口のワーキンググループにしないと、働かない高齢者がこの中に入らない。そのあたりはどうなのだろうか。(産総研黒川氏)
A.議論の中で、必ずしも労働力と捉えているわけではなく、例えば、フリーランスの方もいいれば、ボランティアの方もいる。そういった枠組みでは議論されている。ただ、議論の落とし所がどこにいくのかいつも思うのだが、そうすると契約関係がないと成立しないような規則を作ろうという話になって、どんどん「労働」の方にいってしまう。そのため、仰った通りの問題点というのは議論されている。(佐藤氏)
Q.WHOの壮年期から高齢者に向かってというサポートのカーブがあったが、途中の原先生のお話しにも関係してくるのだが、生まれてから死ぬまでずっと医療のお世話になり続けるというのはあり得ない話で、お医者さんもそれではたまったものではない。そうすると、どこかからはお医者さんの方の管轄で、お医者さんの方もオーバーロードの状態ではなく、きちんとした報酬を得ることができると、そのあたりの切り分けについてどうお考えだろうか。
(大家副座長)A.それを切り分けるために今の制度が設計されていて、社会が動いているということだと思う。そういうフレームの中で起こっている問題を色々と解決しようとしていて、たぶん間違っていないが、身内の話をして恐縮だが、義理の母が亡くなった時のことだが、亡くなる2日前まで自転車に乗ってピンピンしていて、突然寒気がして体温が下がり救急車の中で亡くなった。死因はリューマチの薬で心臓がやられていたことだった。その状況で、医療、非医療で言うと、リューマチは医療にかかっていたが、心臓は医療にかかっていなかったことになる。どちらも医療が役割を果たしていなかったかというとそうではなく、生活も支えていた。そうなると何か不具合を自分で自覚して病院にかかる、先ほど、連続的、不連続と言ったが、自分で不連続だなと思った時は医療にかかっている。その不連続のポイントがはっきりしていれば非医療というのはきちんと線引きできるのではないかと。連続的にどうやって生活を支えていくのかという議論はかなり難しく、お医者さんがそこに介入した時に診療報酬がないというのは一番単純な話になる。(佐藤氏)
Q.もちろんそこに診療報酬をつけていくというのはあるが、逆に社会保障費の観点で言うと、そういった部分は圧縮しましょうという力が作用していて、そういう時にどういう状態がいいのかというと、薄く長く取る方がいいのか、自覚症状があって対応してほしい時に限定して、それ以外の時は違った方向に対応した方がいいのか、厚労省対経産省の戦いのようになっているが、そのあたり色々な発想があるのではないだろうか。(大家副座長)
A.色々試せればいいと思う。社会システム自体をシュミレーションして、何が起こるか研究できるといいと考えている。(佐藤氏)
4.閉会
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